私のワンルームは、いつしか「汚部屋」という言葉がぴったりの状態になっていました。仕事の忙しさとストレスから、片付ける気力を失い、脱いだ服は床に山となり、食べた後のコンビニの容器が、テーブルの上に城壁を築いていました。友人を呼ぶこともできず、家に帰るのが憂鬱で、心はすっかり塞ぎ込んでいました。このままではダメだ。そう思っても、どこから手をつけて良いのか分からず、ただ時間だけが過ぎていきました。そんな時、インターネットで見つけたのが、汚部屋の掃除代行サービスでした。「こんな部屋を他人に見せるなんて…」。恥ずかしさと罪悪感で、電話をかける手は震えましたが、藁にもすがる思いで、問い合わせのボタンを押しました。見積もりに来てくれたのは、物腰の柔らかい女性スタッフの方でした。彼女は、私の部屋の惨状に一切顔色を変えず、ただ優しく、「皆さん、最初はそうおっしゃるんですよ。大丈夫、私たちを頼ってください」と言ってくれました。その言葉に、私は思わず涙がこぼれそうになりました。当日、2人のスタッフが、魔法のように私の部屋を片付けていきました。私が「これは残してください」とお願いした、数少ない大切な物以外は、あっという間に袋に詰められ、運び出されていきます。全ての物がなくなり、がらんとした部屋を、彼女たちは、専用の洗剤でピカピカに磨き上げてくれました。床にはワックスがかけられ、窓ガラスは、外の景色がクリアに見えるほど透明になりました。作業が終わった後、部屋に足を踏み入れた私は、言葉を失いました。そこは、数時間前まで私の部屋だった場所とは、到底思えなかったからです。費用は15万円。私にとっては大きな出費でしたが、得られたものは、それ以上でした。綺麗になった部屋と共に、私は、前向きな気持ちと、自分を大切にしようという、失いかけていた自尊心を取り戻すことができたのです。あの日の決断が、私の新しい人生のスタートになりました。