一時期、空っぽの部屋に憧れてミニマリズムに傾倒したことがありました。不必要な物を全て捨て去れば、人生は劇的に好転し、心は常に平安に満たされると信じていたのです。しかし、現実の私は、好きな本に囲まれていたいし、可愛い雑貨を見つければつい買ってしまう、物欲にまみれた凡人でした。結果として、私の部屋はミニマリストになりきれない少し汚い部屋という、中途半端で自己矛盾に満ちた空間になってしまいました。捨てなければならないという強迫観念と、捨てたくないという執着がぶつかり合い、結局どちらにも振れずに、出しっぱなしの物が散乱している状態です。ある日、仕事で大失敗をして帰宅した私は、床に散らばった雑誌や、山積みになった洗濯物を見て、猛烈な嫌悪感に襲われました。それまで少し汚い方が落ち着くなんて自分を騙していましたが、その散らかりは私の人生の迷走そのものに見えたのです。そこで私は、ミニマリストになることを諦め、管理できる範囲で物を持つという現実的なラインを探ることにしました。少し汚い部屋を卒業するために行ったのは、徹底的な物の住所の決定です。お気に入りの雑貨には特等席を与え、出しっぱなしになりがちな本には専用の待機場所を作りました。全部捨てる必要はない、ただ、自分の意志で物の居場所をコントロールする。そう決めてから、私の部屋から無意識の汚れが消えていきました。少し汚い部屋というのは、自分の意志が届いていない場所があるということです。たとえ物が多くても、全てが把握され、手入れされていれば、それは少し汚い部屋ではありません。自分にとっての適量を知り、物に敬意を払うこと。それが、ミニマリストという幻想に振り回されず、心地よい空間を作り出すための私なりの答えでした。今の私の部屋は、好きなものに溢れていますが、決して少し汚い部屋ではありません。全ての物に魂が宿っているかのように、整然と、それでいて温かく配置されています。無理に捨てるのではなく、大切に扱うこと。その意識の変化が、私の生活に本当の豊かさをもたらしてくれました。