汚部屋と呼ばれる状態から抜け出そうと決意したとき、多くの人が真っ先に自分の居場所であるリビングや、モノが最も密集しているクローゼットに手を付けようとします。しかし、整理収納のアドバイザーや清掃のプロフェッショナルが口を揃えて提唱するのは、意外にも玄関から始めるという手法です。なぜ、生活の中心ではない玄関が最優先されるのか、そこには物理的な動線確保と心理的なハードル越えという二つの大きな理由が隠されています。まず物理的な側面から考えると、掃除という行為は家の中にある不用品を袋に詰め、最終的に外へ運び出すという一連のプロセスで成り立っています。このとき、家の入り口である玄関にモノが溢れ、足の踏み場もない状態では、運び出しの効率が著しく低下します。大きなゴミ袋を持って狭い通路を通り抜けるストレスは、作業への意欲を削ぐ大きな要因となります。まずは玄関に置かれたままの靴や、届いたまま放置されている段ボール、いつか捨てようと思っていた粗大ゴミを排除し、スムーズな「排出路」を作り上げることが、その後の大掛かりな掃除を完遂するための絶対条件なのです。次に心理的な側面ですが、玄関は家の顔であり、外界と自分を繋ぐ唯一の境界線です。ここが綺麗になることで、外から帰ってきた瞬間に感じる絶望感が軽減され、代わりに達成感というポジティブな感情が脳に供給されます。また、玄関という狭い範囲であれば、数十分の作業で劇的な変化を実感できるため、掃除に対する「自分にもできる」という自信を育むのに最適です。玄関の三和土が本来の色を取り戻し、ドアがスムーズに開閉できるようになるだけで、部屋全体を支配していた澱んだ空気が動き始めます。さらに、玄関掃除は近隣住民への配慮という点でも重要です。ゴミを外に出す際、玄関が整理されていれば、周囲に不審な目で見られるリスクを減らし、堂々と作業を進めることができます。汚部屋の片付けをどこから始めるべきか迷っているのなら、迷わず靴を揃え、玄関の床にあるモノを袋に詰めることから始めてみてください。その小さな一歩が、滞っていたあなたの人生を再び動かすための巨大なエネルギーへと変わっていくはずです。
玄関から始める汚部屋脱出の第一歩